今回は、キャリア形成コンサルタント伊賀泰代さんの「生産性 マッキンゼーが組織と会社に求め続けるもの」について紹介します。
マッキンゼー流生産性の上げ方
本書は、生産性を上げるために必要な考え方や生産性を上げる具体的な方法を解説しています。
生産性を上げる関連の本では、メールチェックの頻度を減らすなど具体的な方法を提示することが多いと思いますが、本書ではあまり具体的な方法の紹介はなく、生産性を向上させるにあたっての考え方などをメインに紹介しています。
日本は、製造現場の生産性は高いと言われていますが、ホワイトカラーの生産性は欧米先進国に比べて著しく低いことが指摘されています。この状況を変えるには、小手先のテクニックではなく、考え方から正していく必要があります。
自分あるいはチームの生産性を上げたいと考えている人におすすめの一冊となっています。
ここからは、私が本書で重要だと思ったポイントを3つ紹介していきます。
ポイント①:生産性とイノベーションは両立する
「生産性を追求するとイノベーションは生まれない」と考えてはいないでしょうか?
実はこれは大きな間違いなのです。みなさんのご想像通り、ノベーションを起こすには時間的な余裕は必要です。その時間的な余裕は、生産性を高めることで作るのです。
多くの人の業務は常にイノベーションが求められるわけではなく、一部は、定型業務があるはずです。その定型業務の生産性を高めて、そこから生まれた時間をイノベーションを起こすための仕事に使いましょう。
ポイント②:会議は時間を短くするだけではダメ
会議を効率的にするためには、時間を短くすれば良いと思ってはいないですか?
この考え方では、会議の時間を短くしても、「2時間無駄にしていたのが、1時間無駄にするだけになった」という結果になってしまいます。
会議はそれ自体が無駄なのではなく、時間をかけたのに、それに見合わない成果しかだせないことが問題なのです。
本書でも会議の成果を高める方法はいくつか紹介されていましたが、私が最も重要だと感じたのは、「達成目標を明確にする」ということです。参加者の同じ目標に向かって進むことによって、成果を出しやすくなります。
ポイント③:成果の絶対値を評価対象にしてはいけない
業績評価は、どれだけ成果を出せたかという成果の絶対量だけで評価してはいけません。
このような評価をする組織では、社員は「残業を増やして成果を増やす」ことが評価をされるために合理的な選択となってしまい、同じ成果をより短い時間で出せるようにすることはしなくなってしまいます。
これは組織にとっても良くないことです。生産性が低いということはコスト高な組織になってしまっているということで、競争力の低下に直結します。
成果の絶対量だけではなく、その成果を出すのにどれだけの時間を費やしたかも評価対象とすることで、生産性の向上のインセンティブが生まれます。これは一社員には変えられないことかもしれませんが、部下を持つ人には意識してほしい評価の視点です。
おすすめ度:・☆☆☆☆(ぜひ読んでほしい)
本書は、生産性について、小手先のテクニックだけではなく、考え方から教えてくれる一冊となっています。生産性を変える方法の中には、人事評価の方法から変えていかなければいけないということもありますので、特に、管理職クラスの人に読んでほしいと思います。
逆に平社員が読むと、自分では変えられないところに生産性の低さの原因があると思ってしまい、やる気を失ってしまうかもしれません。(実際には、自分が変えられるところから変えていくべきだと思います。)